アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎はどんな病気?
アレルギー性鼻炎とは、ある物質に対して鼻粘膜がアレルギー反応を示し、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状を呈する病気のことをいいます。
近年、アレルギー性鼻炎を患う人は増えてきており、日本人の約30%~40%がアレルギー性鼻炎であると推定されています。増加している理由ははっきりしていませんが、アレルギーを起こさせる物質(アレルゲン)が増加してきていることが一番の原因と考えられています。気密性の高い住宅や空調機器の普及などにより住宅内にダニが増加したことや、戦後に植林されたスギが樹齢30年以上となり花粉生産力が強くなり、スギ花粉量が増えていることなどが原因と考えられています。
この病気は、症状が一年中認められる「通年性アレルギー性鼻炎」と、ある季節だけに認められる「季節性アレルギー性鼻炎」の2つのタイプがあります。
アレルギー性鼻炎は、自然治癒は比較的少ないとされており、一度発症すると、その後ずっと症状に悩まされる可能性がありますが、適切な治療と日常生活の注意によって、症状の軽減が可能です。
アレルギー性鼻炎の症状
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状です。くしゃみは、発作性に起こることが多く、一度起こると立て続けに何度も出ます。
鼻水は、粘り気がなく、水のようにさらさらとしています。鼻づまりは、鼻の粘膜が腫れておこるため、嗅覚低下(匂いがわからない)や、口呼吸の原因にもなります。
ハウスダスト(室内のほこり)やダニによる「通年性アレルギー性鼻炎」の患者さんは、しばしば気管支喘息やアトピー性皮膚炎を併発することもあります。「季節性アレルギー性鼻炎」のほとんどは、いわゆる「花粉症」であり、鼻症状のほかに、咳、のどの違和感、湿疹、目のかゆみや充血(アレルギー結膜炎)、頭痛などの症状がでることもあります。
花粉症の方でリンゴやモモ、メロン、キウイなどの果物や野菜などを食べた後に、口の中やのどにかゆみやヒリヒリ感を感じる方は口腔アレルギー症候群の可能性があります。
アレルギー性鼻炎の原因
原因になる物質(アレルゲン)は、花粉だけではなく様々な種類があります。
主なものとしては、空気中を浮遊しているハウスダスト(家の中のほこり)、ダニ、ペットのフケ、花粉(スギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサなど)、カビなどが原因となります。これらのアレルゲンを吸い込むと、鼻の粘膜にある抗体と反応し、アレルギー反応を引き起こし、ヒスタミン等の化学物質を放出して鼻の粘膜を刺激していきます。ハウスダストは1年中存在しているため、季節に関係なく鼻の粘膜でアレルギー反応がおき、花粉が原因の場合は、スギは春、ブタクサは秋といったように開花の時期に合わせて症状がでます。
さらに近年、環境因子として黄砂やPM2.5なども問題になっています。黄砂には細菌、カビ、微生物の死骸、硫黄化合物、窒素化合物などの大気汚染物質が含まれており、アレルギーの原因になります。PM2.5と花粉が同時に暴露された場合、花粉症が悪化すると言われています。
アレルギー性鼻炎の検査と診断
まず、アレルギー性鼻炎であるかどうかを問診や鼻の検査などで判定します。
検査
問診
症状の好発時期や時間帯、症状の程度、発症年齢、職業、他のアレルギー疾患の有無、家族のアレルギー疾患の有無などを確認します。
鼻鏡検査
鼻水の分泌量、鼻の粘膜の色などを確認します。
鼻汁中好酸球検査
アレルギー性鼻炎の人に多くみられる「好酸球」という細胞を調べます。
診断
次に、アレルギー性鼻炎の原因は何かを調べるための下記のような検査を行います。
1.皮膚テスト
アレルギー反応がでる可能のあるエキスを、皮膚に注射する、または皮膚に出血しない程度のひっかき傷をつけ、そこにたらして反応を見ます。
2.血清特異的IgE抗体検査
採血をしてアレルギー反応をおこすIgE抗体が、血中にどの程度含まれているかを調べる検査です。一度に多くの原因物質を調べることができ、アレルギーの強さもわかります。
3.誘発テスト
アレルギー反応を示す可能性のあるエキスをしみこませた小さな紙を鼻の粘膜に貼り付け、5分後に反応がどの程度でるかによって判断します。
アレルギー性鼻炎の治療方法
アレルギー性鼻炎の治療は主に下記の4つに分けられます。
アレルギーの原因物質の除去と回避
生活環境から原因となるアレルギーの原因物質(アレルゲン)を取り除くことで症状が軽くなります。したがって、主なアレルゲンであるハウスダスト、ダニ、花粉を減らすために、リビングや寝室はこまめに掃除する、布団はよく日光にあてて乾燥させダニを掃除機で吸い取る、花粉を家の中に入れないようにする、などを心がけましょう。またダニを増やさないようにするために、部屋の湿度は50%程度、室温は20~25℃に保つといったことも重要です。
ペットアレルギーの方は、できればペットの飼育をやめるのが理想です。困難な場合には寝室内には入れないようにし、ブラッシングやシャンプーなどでペットを清潔に保つようにしましょう。
薬物療法
薬物療法は最も一般的な治療法です。
抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、副腎皮質ホルモン薬(鼻噴霧薬や内服薬)などを症状に合わせて使用します。スギ花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎は、原因となる花粉の飛散が始まる1~2週間前から抗アレルギー薬を使い始めておくと症状が軽くすむといわれています。
特異的免疫療法(当院では施行いたしておらず、必要時には専門医療機関をご紹介いたします)
アレルギーの原因となっている特定の原因物質の抽出液を皮下注射し、その物質に対する体の免疫機能を高めていく治療法です。
低濃度・少量から始めて、少しずつ濃度と量を増やします。2~3年間、定期的に治療を行うことで約70%の人に改善がみられます。この治療法であれば、完治も期待できるとされています。まれながら重篤な副作用(全身性アナフィラキシーショック)を起こすことがあります。
12歳以上のスギ花粉症の方に対しては、舌にスギ花粉エキスをたらして花粉症を治すという舌下免疫療法が、専門医療機関において保険診療が可能となっております。
毎日舌の裏にエキスを滴下し、2分間そのままの状態を維持したのちに飲み込みます。これを3~5年間続けます。重篤な全身性の副作用はほとんどないとされ、自宅での治療が基本になります。
手術療法(当院では施行いたしておらず、必要時には専門医療機関をご紹介いたします)
鼻粘膜にレーザー照射をしてアレルギー反応を和らげるレーザー手術、電気で鼻粘膜を焼く手術、鼻粘膜を切除する手術などが行われます。レーザー手術は出血も痛みもほとんどないため日帰り手術も可能です。
アレルギー性鼻炎の日常生活における注意点
治療の基本は、原因アレルギー物質(アレルゲン)からの回避です。そのために、まず血液検査などでアレルゲンを同定することが大切になります。ハウスダストやダニ、花粉が主なアレルゲンになりやすく、これらに対する注意点をあげてみます。
ダニ対策
集合住宅などのような気密性の高い住居では換気が不十分になりやすく、ダニが発生しやすい環境であります。
絨毯・ソファー・布団・ぬいぐるみなどにはダニが繁殖しやすく、時間をかけて丁寧に掃除機をかけるようにしましょう。ダニの増殖を避けるために、室内でのペット飼育を避け、部屋の湿度は50%程度、室温は20~25℃に保つように心がけましょう。
花粉対策
一般的に花粉は晴れた風の強い日に飛びやすく、雨の日に少なくなります。花粉の飛散情報も参考にしながら、花粉飛散量の多い日にはできるだけ外出を避け、外出時にはマスクやメガネを着用しましょう。帰宅前には衣服に付着した花粉をよく振り払い、家の中に花粉を入れないように心がけましょう。帰宅後の洗顔やうがいも有効です。部屋の掃除をこまめにし、空気清浄器を活用するのも有効です。
その他に、規則正しい生活を送り、十分な睡眠時間の確保し、過食や偏食を避け栄養バランスの良い食事を摂取するようにしましょう。